自分としては落ち着いた感がある。
なにせ一万ルーメン超の威力を見せつけられた日には
もう暗闇の概念そのものが変わってしまった。
洞窟であろうと廃隧道であろうと、自分の部屋と変わらぬ
明るさにあっては、何の恐怖も芽生えないことに気づいて
しまったのだ。
鮒田発電所跡に着いたのは、すっかり夜になっていた。
案の定だよ。そろそろ終わりにしましょう、と切り出さない
限り際限がない感じだ。次どこ行く、と言い出しかねない。
明るいライトに照らされて花粉がキラキラと光っている
のには閉口した。
発電所跡だ、と言われたら、なるほど、という感じだ。
放流口らしきのが見える。
取水堰堤まで、そう遠くない、と言うから行きそうに
なったが、やめておいた。
明るい時間に見たいじゃない。再訪した。
大人になったもんだ。
バス停は「発電所前」だ。素晴らしい。
明るいと景色も違う。明るい方がいいな。
しかし昔は違った。写真を撮るようになったからだな。
写真を撮らなかった時代には夜の徘徊が専門だった。
そんな時代が懐かしい。大人になったんだ。
せっかくだから取水堰堤跡も見に行く。
なかなか良い感じだ。
紀州の山林を感じる看板だ。
対岸の水路と高さが合ってきた。そろそろ取水だ。
水路は橋で越えていたのか。
橋の跡らしき鉄骨。この辺りが取水堰堤だったの
だろう。
取水堰堤到着。
引き返す。
発電所跡の上のほう。水路はどの辺りなんだろう。
ここからは、もうどこに水路があるのか、もわからない。
長閑な風景だが、ここは紀州の山。
この後、いやというほど紀州の山を思い知らされる
ことになった。
あの花粉を飛ばしていた枝は、昼間も元気に
花粉を飛ばしていた。